2017年09月13日

[106] 想い出の記 / Eさんのこと ‘思えば遠くに来たもんだ’

夏期講習と夏期休暇
 8月といえば、予備校は夏期講習の最中ではあるが、夏期講習の期間の
大学の夏期休暇は、GHS卒生が代わる代わる訪問に来てくれる嬉しい時期でもある。

この春に、東海地方の私立医大に正規合格を果たしたEさんが訪ねてきてくれた。
昨年は幾つか一次合格にこぎつけたが、わずか届かなかったらしいが、
今年は「正規合格」である。これが昨今どれほどの難事で憧憬の的であるかは、
少しでも医学部受験にかかわった人ならよーくわかるはずである。
でも、よくわからないという人のために簡単にいっておくと、
たとえば、東大などは、合格者に正規だの補欠だのという区別はないものである。
合格すれば入学するのがふつうだからである。東大に入りたいから東大を受験するのだから。
ところが、医学部受験生は医学部に入りたいのであり、かつ
私立医大は一人が何校出願してもいいので、合格者は重複する。ある医大に合格しても、
他の合格した医大があれば、そちらに進学する可能性がある。
しかも、昨今は、国立医学部志望者が、少子化と時代趨勢と学費の値下げ合戦などが
相俟って参戦してくるから、国立医学部に行ってしまう人もいる。
いきおい、それを見込んで合格者を多めにだしたり、補欠合格者をだして繰り上げたりする。

だから、「正規合格した」というのは、そういう者達と肩を並べて遜色ない学力に達した、
ということになる。狭き門のさらに第一ゲートである。
だから周囲の受験生の反応も「すごい!!」となるのである。
しかしながら、いささか失礼ながら、EさんがGHSに来た時、正直なところ、
こんな未来が待っているとは想像できなかった。出発点は低いというより「無」であった。
そんなEさんへの想い出の記。


地方の一貫校のジレンマ
 Eさんは、甲信越地方の私立の中高一貫校を出てから、GHSにやってきた。
なんとしてでも医学部にいきたい!!という意気込みと意志は感じたが、
如何せん、受験勉強に入るための基礎学力自体がない。
ここから医学部とは・・・、長く、遥かに険しく、何の保証もない道だなぁ・・・
最初の数ヶ月のEさんの知識の希薄さをみるにつけ、暗澹たる思いになったものである。

内部進学ができる中高一貫校は、原則として受験指導をやろうとしないから、
授業は教科書レベルを出ず、その範囲をきちっと定期テストで点がとれているか、
教師も生徒もそういうモードになる。テストが終われば忘れてよい、
また次のテストだ、という近視眼的な、表面的な勉強が染み付いてしまう。

しかし、医学部入試は、高校課程の全範囲からどこがでるかわからない。
膨大ともいえる知識を頭に入れた上で、入試問題を限られた時間で解き切る必要がある。
中学入試や高校入試で、難関目指して、しっかりと勉強した経験があればまあましなのだが
地方では県立高校が優勢なこともあって、私立の一貫校に入るハードルは高くない。
中学課程の三年分さえ、きっちりと頭に入れることなく高校課程を迎えることになる。
もちろん、内部進学ならそれで問題ないが・・・・。

そんな環境で高校時代を過ごしたこともあり、Eさんは結果的に、
医学部入試の勉強を始めるための学力に達するまでに2年を要した。
英語、数学、生物、化学すべてをGHSで再履修すること、
いや、はじめてしっかりと応用に耐え得るような基礎をようやく学べたのである。
とても美しい字で、整然としたノートを何冊もつくってその試練に耐えた。

厳しい中学入試や高校入試をくぐらなかった分、全科目の全知識が入る頭になるのに一年、
それが実際に入って馴染むのに一年、つまり、まともな高卒学力を得るに2年かかるものである。
そうやってはじめて、自分が高校時代に何も学ばされてこなかったことを悟った。
曰く「中高一貫校になった初年度は、とにかくいい先生ばかりその学年に固めたんです。
   つまり、6年に一回だけいい先生グループにあたるけど、私はそのハズレの学年。
   今思うと、何一つ入試につながるレベルのことは教わっていなかった・・・・」
これで大きな岩壁を登りきったわけである、が・・・・。

これ以上勉強できない・・・
 2年目を費やしてここまできたEさんであったが、それはまだ、ただ高校課程をまともに
卒業したレベルにすぎない。学部を選ばなければどこでもいけるが、医学部になると、
ここから、入試のハイレベルに対応できる、偏りなき学力とスピードを身につけなければならない。
岩壁をのぼりきったとき、さらに大きな岩壁がそそり立っていることを入試で思い知らされ、
漏らした言葉「私、これ以上勉強できない・・・」
私がEさんから聞いたGHSでの最後の言葉だったように思う。
Eさんの出発点からして、医学部はどこも、高い高いハードルであったから、
これ以上は無理かな・・・・という感じさえ覚えた。

そこから一年後の昨春、Eさんからは音沙汰なく、
そこから、今年の合格に報に接するまで、さらに1年の月日が流れた。
この間は、基本的には予備校に通わず、一人で勉強していたと。
科目によっては個別指導を受けてはいたらしいが、基本的には、この2年の学びで、
「あとは自分でやるだけ。たくさんやって身につけるだけ。」ということが分かったのだ。

2年の雌伏の期間、GHSでの学びを身につけるべく、ひたすら実戦レベルの訓練をしていたのだ。

正直いって、「正規合格」は信じ難かった。そういう出発点であったことを知っていたから。
心底、嬉しかった。Eさんがもし、最初にGHSの門を叩かなければ、
高校課程の再履修がしっかりできないまま、小手先の暗記に終始し、伸び悩んでいたことだろう。
その出会いから、「正規合格」という歓喜までの4年間、その初心を貫く意志の堅牢さには
惜しみない賞賛をおくりたい。

だから、これを読んだ受験生には、ゆめゆめ「私もあとに続く!!」などと思わないでほしい。
受験生諸君を激励するためにこれを書いているわけではない。
ここまではできない、許されない、と思うなら、なるべく早く別の道を探すべき!!と訴えているのだから。

これは実に大変なことなのだ。登りきった岩壁の先にそれより高い岩壁があったことに気づいた時の絶望感、
それは、登りきったものでないと味わえない。
そして、そもそもそこまで登れないで挫折する人の方が多いのであるから。
絶望感を受け止めて、そのさらなる岩壁をやっぱり登るしかないと腹を決めてけっして諦めない根性、
それが自らにあるかを真に問うてほしい。
その上でのやる気であれば、GHSの教育理念と独創メソッドは、君に「共鳴」する。
posted by Koujin Amano at 11:27| GHS卒生

2017年08月26日

[105] ‘水蒸気よ、永遠なれ’

気がつくと、あっという間に、夏期まで駆け抜けてしまった。
前回、水蒸気の話をしたが、この間にかなりの問題をやっつけて、
解析と論理化がすすんだ。その成果は、いずれ何らかの形で公開しようとは思うが、
とにかく、入試では「難問」の群を形成することは昔から変わらないのに、
水蒸気についての扱いを明解に説いたものは管見ではなく、
(だからこそ、ずっと「難問」のままなのだろうが・・・)
受験化学において、手付かずの領域である。
実際、教科書や参考書でも、どの箇所で本格的に扱うかは定かではない。
たしかに、気体に関連して、蒸気圧曲線や、飽和蒸気圧について触れることはあるが、
入試の蒸気圧についての問題を解くには心許ないレベルでしかない。

それは、前回示した、蒸気の問題分類目次でも明らかになったように、
化学のあらゆる分野に顔をだす、「スパイス」だからである。
中身は基本的な気体の問題でありながら、「水蒸気は無視できない」とするだけで
「難問」に格上げされる。
そんな水蒸気および蒸気一般の論理性と解法の探求が夏期の講義までで、
とりあえず一段落ついたので、そのエッセンスを他のクラスにも還元すべく、
講義しはじめたところである。データ化も進んでいる。

「案外」といってよいかは微妙だが、センター試験には、この「蒸気」をあつかった良問が
少なからずあるのである。センター試験レベルで100点満点を狙うには、
こういう点での攻略も二次試験レベルでできている必要があると感じたわけである。

『体系化学』および『体系化学アドバンス(1)』の読者諸氏諸君に向けて、
特にいっておくと、水蒸気の問題を解くための「原点」は、
水銀による蒸気圧測定法、いわゆるトリチェリの真空の問題である。
水銀は、その中毒性などから余りイメージは芳しくないが、
殊、蒸気圧を語るにあたっては、主役といってよいほどに優れた物性をもつ。
水銀血圧計が医療の現場では、けっして無くなることはないことからも示唆されるように、
蒸気圧と水銀の関係は ‘永遠’ なのであると感じた次第。
だから「蒸気と水銀よ、永遠なれ」ということが骨子なのだが、
語呂的にはタイトルのごとくにしておいた次第。

そこで問題として浮上したのが、水銀柱の「長さ」を「圧力」に換算する公式である。
これを水銀柱に限らない一般形にして、化学基礎公式B'の拡張公式No.3として
位置付けることにしたことを報告しておきたい。
化学基礎公式@の分子の拡張公式として、『体系化学』においてすでに説いたように、
密度を質量に換算する公式がNo.1である。
また、『体系化学アドバンス』において紹介したように、
化学基礎公式@の分母を「平均分子量」として捉えるのが拡張公式No.2である。
ここで、拡張公式が追加となるとは私も予定になかったが、
これがあると蒸気圧測定の問題が統一的に(≒ワンパターン)で解ける。
それはいったいどんなものか……各人、推理しながら、公開の時をお待ちいただきたい。
posted by Koujin Amano at 11:50| 体系化学

2017年05月29日

[104] 勝つための・体系化学3  ー「水蒸気」は「単振動」ー

体系化学アドバンスの消息
  前回のつづき、「体系化学3」の話である。
体系化学3の授業は4月この方、数回行ったが、
GHSでもこれまであまり十分触れていないエリアに侵入している。
というのも、そこまで説かなくても生徒たちが合格していったということなのだが、
「大は小を兼ねる」ような授業をやる・・・・つまり、体系化学テキストを学び切り、
私がやりたいことをやりたいようにやっても応じてくれる生徒が存在するのは
著者として実に幸せなことである。私をさらに楽しませてくれる。

以下はかつて『医大受験』創刊号で書いておいた
「体系化学アドバンス」の連載予定リストである。

第1講 化学反応公式❻の陥穽と完成
第2講 世に言う「二段階中和」という嘘実
第3講 「チオ硫酸ナトリウムとヨウ素の反応」という‘遠回り’の効用
第4講 混合物とその平均   ー「平均分子量」は役に立つか?ー
第5講 結晶格子の色々様々
第6講 基礎公式と化学法則の修練
第7講 油脂計算を極めるフォーマット
第8講 1st Stageの最終獲物(ゲーム)  ー「蒸気」と何か, 蒸気圧の法則性ー
第9講 熱化学の一歩先   ー3番目の‘基準’とイオンの捉え方ー
第10講 高分子の世界に届く  ー 大きなnとの付き合い方ー

網掛けしていないところが未公開テーマである。
もちろん、予定とは「予定」なのであり、最初こそ順調に書いていたが、
第5講の「結晶格子」のスタンダードレベルをもう一つの私立医学部向け連載で説いたこともあって
第9講を先に書いたところまではよかったが、GHSでの授業の進展や諸々の事情で、
そこから先、予定リストにはなかった「電池の歴史」の連載に移行した。

“ボルタが遺してくれたもの”と題して、現在、教科書では
「欠陥電池の発明者」かのような不当な扱いをされ、
「電流を人類に開放した大恩人」としてのレスペクトが皆無であることへの義憤と、
ダニエルから電池の話がはじまるという教科書執筆者の見識の低さへの慨嘆と、
さらには、身近であるという理由だけで「電池」が『化学基礎』の教科書で扱われ、
高校生の化学学習に混乱をもたらす弊害への憂慮とにより、
テーマをこちらにふったという経緯がある。

なんとなれば、「電池」というのは身近でありながら、
それは化学技術の集大成であり、高度なデバイスであるのだから、
それを化学入門レベルの高校生が理解することは至難なのである。
化学反応も複雑であり、とうてい「化学基礎」の範囲とはいえない。
これは、高校化学を一通り学んだあとに、その集大成の技術の一例として学ぶべきであり、
それは「コロイド」と同様だと思っている。
……その論証としての電池の歴史の展開に、4号分、一年間のページを費やしてしまった。
それほどに、「電池」は、アドバンスレベルの内容だからだ。

そして、そうこうするうちに『医大受験」自体が終刊を迎えることとなり、
それでは!! ということで、まったくふれていない有機化学について、
連載を二回したところで終了となった次第である。
その後に残った未公開テーマのうち、大物中の大物が
  第8講 1st Stageの最終獲物ゲーム   「蒸気」と何か, 蒸気圧の法則性
である。
水蒸気ないし蒸気の問題は、昔々から「難問」のエリアにありつづけているが、
水蒸気の扱いについて、系統的にかつ明確に説いたものは管見では未だ無い。

「水蒸気」は「単振動」だ!?
 近年、いわゆる「入試問題正解」という書物から、
「入試問題データベース」へのシフトがすすんでいる。
毎年出される「入試問題正解」は、ページ数や解答掲載のハードルがあるためだろう、
毎年の入試問題を網羅できていない。主要大学プラスαには編者のセレクトがかかっている。
これに対して入試データベースには、その制限が無い。しかも、数年にわたって
テーマやキーワードで入試問題を収集することが可能である。
「入試問題正解」では、索引等で該当ページを調べ、コピーないしスキャンしOCRでテキスト化し、
さらに、文字化け等の修正をして形を整える・・・という手間が必要だった。
だから、5題も処理したら手一杯だったものだ。

このハードルが大きくクリアーされた入試データベースを用いて、
ここ8年分のほぼすべての入試問題から、「水蒸気」や「蒸気圧」に検索をかけた。
積年の(強いて言えば、私が受験生の時からの積年である)課題であった、
「蒸気」に関する考えうるかぎりの入試問題をあつめるということが実現した。
その数はおよそ200問超。GW前後の余暇は、そのタイトル付けと分類とに費やされた。
なかなか、有意義な連休の使い道であることか!!!

  その結果は以下である。

 体系化学アドバンス(2)
   第︎●●講 水蒸気と蒸気のトリセツ
       Part 1.蒸気とは何か
§1-@ 状態図と三重点 水
§1-A 状態図と三重点 二酸化炭素
§2-@ 蒸気圧曲線 水
§2-A 蒸気圧曲線 水以外
§2-B 蒸気圧曲線   水と●●との蒸気圧比較
§3     水銀柱と蒸気圧
Part 2.蒸気圧についての法則と応用
§4-@ 蒸気圧降下 ラウールの法則
§4-A 蒸気圧降下 分留 ー水蒸気は味方さー
§5     水蒸気蒸留
Part 3.水蒸気はジャマ者さ?!
§6     気体と水蒸気の混合物
§7     固体と水蒸気
§8     水上置換と水蒸気
§9     燃焼反応と水蒸気
§10   ヘンリーの法則と水蒸気圧

如何であろうか。一覧してお分かりと思うが、有機化学をも含んで、
化学すべての分野にまたがる巨大な問題群を形成する。
言い方を変えれば、「蒸気の問題」をすべてやれば全分野でハイレベルの学習ができる、
ということである。それは、物理でいえば「単振動」のようなものである。

単振動は物理のあらゆる分野で(原子物理でさえも)姿を見るものである。
したがって、アドバンスレベルとして単振動にフォーカスして全分野を学習するという学び方は、
ずっと以前から「単振動スペシャル」と題してGHS体系物理で演習してきたものである。

 化学でそれに匹敵するのは「水蒸気・蒸気・蒸気圧」である。
でもまあ、『医大受験』に連載しなくてよかったかな・・・。
少なくとも4年くらいかかりそうなテーマである。
   
授業では、それを体系化学的に説き、かつ解き直し、解答を確定するという
探究的な取り組みが必要である。授業はゼミのような討論の場となる。
こちらが提示した項目について、GHS生たちが腕を振るって解答を書いてきてくれる。
実にありがたい。『体系化学』もその蓄積で形となったんだった。
私一人で歩こうとしたら、とうていやり遂げられないだろう。今年もよい生徒に恵まれた。
もっともっと、楽しませてもらいたいものだ。
posted by Koujin Amano at 09:53| 体系化学

2017年04月30日

[103] 体系化学 ワン,ツー,スリー

新学期開講!!
 浪人生にとっては必ずしも嬉しい春ではないにせよ、
新たに集いしGHS生とともに、仕切り直しのスタートを切った。
今年も総数30名ほどのほとんどが医学部志望者である。
毎年難化していく医学部受験に対して、小手先のテクニックや、詰め込み暗記や、
ましてや根性や頑張りだけではどうにもならない現実をつきつけられ、
GHSのメソッドに光明を見出し、全国から集まってきた受験生に、
こちらも精一杯のパフォーマンスとスキルで応えるべく動き出した。

GHSでは、時間割やカリキュラムについて基本線はあるが、既定のコースやクラスはない。
毎年、集まった生徒の状況を把握し、情報を総合しアレンジする。
……ということで、今年は、体系化学を1,2,3と分けることにした。
有機化学はまた別に設定してある。
昨年度は、有機化学の他は、定量化学と定性化学、化学アドバンス
という分け方をした。それもまた、顔ぶれをみてのことであった。

開講にあたって、「出発点確認テスト」を行った。その結果を分析して、
「体系化学1,2,3」という発想になった。

もとより、GHSでは、入会にあたって選抜テストをすることはない。
無選抜、申し込み順、やる気次第」の三原則は長野校も含め堅持されている。
最初から、ある程度の偏差値のあるものばかりを選抜して、
トップのクラスをつくり、そのクラスの合格率だけを発表して集客する、
というようなアコギな真似はする気がないからである。

出発点を確認するのは、出発点を問題にしないから!! である。
GHSの体系化学メソッドは、そもそも、化学の再履修が必要な生徒、
ゼロからやり直し、という生徒たちを相手に構築されてきたものである。
だから、高校の成績も、これまでの模試の成績も関係なく、
一からやり直す意志さえあれば、誰でも登っていける学習メソッドなのである。
それゆえ、今回のクラス分けの要点は、「どこからはじめるか?」ということにある。

体系化学1,2,3
今年の生徒は、例えば一度私立医学部に通ったものの飽き足らず再受験、というツワモノや、
高校時分から体系化学を学んできている者・・・等々、いて、
ゼロからの再履修とはカリキュラムはおのずから異なるべきである。
つまりは、STEP1,2,3というふうに考えてもらえばよいだろう。

体系化学1=STEP1は、高校化学の知識もないに等しいと思って、
まっさらな状態からやり直すそんな気持ちで臨む授業。
もちろん、時間はかかることは互いに承知。
でも、急がば回れである。そうやってみんな這い上がってきた。その大事な原点。

体系化学2=STEP2は、リフォーム可能な・必要な知識がすでにある程度あり、
体系化学テキストの独習が可能と判断される生徒たち。
だから、体系化学演習の一歩先の内容で、体系化学を学び、アドバンス(1)へとつなぐ。

では、体系化学3=STEP3は何か?
それは、体系化学アドバンス(2)へとつながる道である。
 STEP2 アドバンス(1)+αを修了した生徒が若干名在籍している。
そのおかげで、今年は最初から、その先の講義を展開することができるわけだ。
体系化学はGHSの生徒たちとともに作ってきたのである。
その最初の学びの年齢が早め早めになってきたためと、医学部の難化のために、
受験期間が長め長めになっていることが、この授業を呼び込んだのである。

昨年の11月に書いた「無機定量分析」は膨大多岐にわたるため、
完習にいたらなかってという心残りを解消することもメニューにあるが、
『医大受験』で、アドバンス項目として立てながらも、触れるに至らなかった
大物ネタを最初に扱うことにした。
それはいわずもがな、「水蒸気、蒸気、蒸気圧」である。
このテーマは、物理でいえば、「単振動」級である。
どこにでも顔を出し、「難問」化に花を添えるものだ。
これも100問を超える大作になりそうだ。

検索に引っかかった問題は膨大であり、10数問程度のファイルが、50以上にのぼった。
これらを整理統合して、系統的にかつ厚く演習していくのが、体系化学3である。
もちろん、もはや、私が先に立って教え込むことはほとんどない。
体系化学を修行中のGHS生たちが、体系化学的な解答作りに努力してくれるはずだ。
私は、それを高みの見物でもさせてもらって、データ化・公開へとつなぐ・・・・
なんと愉しい年度スタートの光景であることか。
posted by Koujin Amano at 12:20| カリキュラム

2017年03月18日

[102] 想い出の記 / T君&Y君のこと

先日、GHSで新年度に向けてファイルの整理や掃除をしていると、
今年、難関の医学部に合格したY君、T君がちょうどやってきたので、
直接報告を聞くことができた。

両君は今年の ‘大成長株’ である。その成長の意味は、
「各人の出身高校は、毎年の東大・医学部合格者は0 or 1名」という
一応の「進学校」であり、そこからの逆転合格であるからである。

「ここであなたも逆転合格!!」というTOPのフレーズはダテではない。

その高校の先生方にはこの事態は想定外のまた外なのであろうが、
高校にとってはこの進学実績は、まさにタナボタもの。
「高校に報告にいったら、知らない先生からも握手されました……」と。
先生にしてみれば、
「ウチから医学部なんて無謀だからやめなさい。
 君は医学部の難しさを知らないんだよ。国立?とんでもない、
 二浪しても無理!!……と昨年断言したが、一浪で国立合格??
 ……まあ、とにかくめでたい!!」というところであろうか。
この間に両君に何が起こったのかは、知る由もなかろう。


前回、前々回と書いたから具体的には繰り返さないが、
医学部は私立も国立も半端なく難関になった。
しっかりとした、本物の学力がないとひっかかりもしない時代になった。

こういう時代の中で、GHSを嗅ぎ分け、ここに辿り着いた、この二人の強運と、
こんな二人に出会い「無謀な」夢を、叶えてやれた我々の幸運を歓びたい。

もっとも、GHSにくれば誰でも奇跡がおこる、
などという誇大宣伝をしたいのではない。
むしろ、メインのテーマは、同じようにGHSで授業を受け、
同じように指導されても、「成長株」になれなかった人もいるということ、
その分かれ目は何なのか、
それを二人の一年を振り返って、考えてみたい。

やる気の内実
HPのQ&Aにもあるとおり、GHSは「やる気にさせる予備校」ではない。
元々、たいしたやる気も覚悟もない者が、こんなに難しい医学部なんて
いけるはずがない。問題外である。
それこそ、何年かかっても無理なのでハナからやめておきなさい。
親の方がやる気満々でも、本人がそうでもなければムリ。
むしろ、「この子にまかせてます」という親でありたい。

GHSは、やる気があるのに、指導者に恵まれず、
低迷し、道を求めている人を引き上げる予備校である。

だが、問題はその「やる気」の違いである。
この時期、誰もがやる気である。
「あと一年ある、頑張るぞー!!」と誰でも思う。
そして、スタードダッシュの勉強の毎日。
そこまでは誰もが一線。
「今年度の生徒はみな頑張っているね」と。

だが、これは残念ながら「やる気」ではない。
指導をはじめて、三ヶ月も経つと、各科目もある程度進度がでて、
高校一二年生レベルの復習は終わり、知識も膨大になりかける。
このときに、最初の試練が訪れる。
人間関係がどうだとか、体調がどうだとか、通学がどうだとか……
大きな目的を達成するのにどうでもいい理由をつけ始めたら黄信号である。
やる気とは、そんな些事に見向きもしないで前進する姿に宿る。

そんなとき、頑張り続ける意志を「やる気」という。
やる気は、行動と事実で示すものであり、
「やる気があります」と宣言することではない。

この二人は、寡黙ながらも、その「やる気」を行動で示しつづけた。
健康管理・時間管理をしっかりして、授業に出つづけて、
いつまでにこれをやれ、といったことを言った通りやる。
その意志の持続をこそ「やる気」というのだ。

そうすると、「体系的な頭の働き」という救いの手が差し伸べられる。
膨大に見える知識でも、それをしっかりと頭に入れるための
GHSの「魔法の杖」だ。
「要するに化学計算なんて、みな同じじゃないか、
 そうか、やっぱり一つがすべてってことなんだ!!」と。

こんな本物のやる気を支えるものは、一人一人違うもの。
なんでもいい。
生まれながらに背負ってしまったものを払拭するためでもよい。
亡くなった者の夢を自分が叶えるためでもよい。
自分を見限った担任を見返してやりたいという執念でもよい。
・・・・・・・
いずれにしても、自らの運命を切り開くにたる、
重い扉をこじ開けようとする「諦めない心」を支えてくれる核となる。

ただ、やる気は他から与えてもらうものではない。
サボるときもそれが口実になるのだから。

でも残念ながら、何年も新年度生を見続けていても、
その「やる気」がこの時点で本物かの判断はなかなか当たらない。
秘めた闘志や、ここぞというときの粘りづよさは見えにくいもの。
三ヶ月たってようやく見えてくる。
半年もたてば、GHSのメソッドが効いてきたことがわかる。
そこから、文字通り脇目もふらず、毎日自習室で、自分と戦った
二人のやる気をみていると、当然の結果であると思う。

そんな二人に、とにかく、オメデトウ。
posted by Koujin Amano at 15:39| GHS卒生

2017年03月17日

[101] 体系物理テキストver.4.0 の公開のことなど

Info.1  体系物理テキストver.4 公開しました。
 本日、体系物理の2017年度テキストとして、ver.4.0をGHSのHPにて
電子ブックとして公開しました。
 これまでは、ver.3.0の力学編だけの公開でしたが、今年は、
第1章力学〜第4章波動(力)学まで、いわゆる原子物理を除く全分野を
フルオープンしました。しかも全ページフルカラーです。
今まで、モノクロコピーされることを前提に、
グレースケールで妥協してきたのですが、電子ブックという公開の形、
さらに、フルカラーでのオンデマンド少部数印刷が可能な時代となり、
さらに、後述のようにGHS自身が書籍販売ができるようになったことを受け、
B5サイズのフルカラーでの原稿作りに切り替えた、第一弾となりました。
GHS HPからからもアクセス可能。URLは以下。

今年のテキストは、昨年の力学編テキストが残部あるため、
第2章〜第4章の約180ページで少数部印刷します。
というのも、来年は、力学編もあわせて正式なテキストとして
印刷するつもりだからです。
今年のテキストは、新宿本部部生と長野校生、および講師用の
限定部数ですので、残部は10冊もないかもしれません。
基本的には非売品ですので、販売書籍のコーナーにはラインアップしませんが、
中身をごらんになられて、どーしても欲しいという方がいらっしゃれば、
本部に問い合わせてみてください。



Info.2  思考訓練シリーズの正式販売、開始。
 またもや、書店から姿を消した思考訓練シリーズですが、
「幻の名著」にはなりません。このブログでもお知らせしているように、
GHSは登記時に受験生の教育以外に、書籍販売業も入れてあり、
多田先生のご遺族からの承認も経て、育文社から、正式に版権を継承しました。
したがって、書店には並びませんが、GHSから直接購入することが
できるようになりました。もし、在庫がなくなれば、印刷して販売してよい、
ということなのです。
 『体系化学』も正式に購入できますので、読者倶楽部の会員の方々には、
どうぞご安心を、とお伝えしておきます。
書店を介さなくでも書籍が売買できる時代状況が、思考訓練シリーズの
命脈を保つことに大きく寄与したのです。
ちなみに、購入5000円以上は、送料無料となっているそうです。

Info.3  体系化学・改訂版 予告
 読者諸氏はご存知のように、計画としては2008+4×2=2016年
すなわち、二つの目のオリンピックイヤーに改訂版を出す、ということで、
改訂版の原稿作りはすすんでいました。ほぼ半分できたところで、
育文社が終幕しました。ただ、上のような状況からみると、
かえって自由度が増したと考えています。
もともと、体系化学は他のテキストとおなじ、B5版のノートサイズでした。
ところが、A5の教科書サイズでないと、書店が置いてくれないということで、
サイズ変更を余儀なくされ、発行が三ヶ月伸びた、という経緯があります。
そして、もう一つ、読者諸氏はおわかりでしょうが、体系化学において、
イコールは三通りで色分けしてあります。
つまり、が1st Stage,が2nd Stage,=が算数。
当初は、当然に三色刷りという話でしたが、当時の出版業界では、
三色にすると三倍、というようなコストがかかる状況でした。
そこでまた妥協して、二色にしたのです。

私自身の生き様は、妥協ということが似つかわしくないものでしたが、
まあ、無い袖は振れぬ、といいうことで、世に出すことを優先した次第です。

そして、ようやく、針が対極に振れたようです。
これまでの原稿を今一度解体して、B5版、フルカラーでの原稿作りを
することに決めました。どんな風になるかは、
体系物理のテキストをみていただければ参考になると思います。

多忙の身ゆえ、いつとは期限を区切ることはできませんが、
静かに、しかし、確実に、そのプロジェクトが進行していることを
ここに、お知らせいたします。


posted by Koujin Amano at 14:39| 体系物理

2017年02月01日

[100] 難化,妥当?

センター試験から私立医学部入試へと日程は進み、
私立医学部入試の結果報告が届くようになった。
生徒達は明暗・悲喜こもごもの日々。

難化の連鎖要因
私立医学部の難化をうけて、GHSが2008年に私立医学部専門コースを立ち上げて、
10年ちかく……。当時、中堅私立医学部が早稲田理工より偏差値が上になった!!!!
との記事が「日経メディカル」をにぎわした。
現役ドクターや医学部の関係者がざわついたものである。
「今だったら、オレ、医者になっていないかな・・・」と。
実は、この間にまた難化は加速し、あらたな質的変化がみられたように思う。

かつては、学費の圧倒的な差があり、国立医学部と私立医学部との間には、
主に経済的問題で、受験生の明瞭な棲み分けがあった。
ところが、主に二つの要因により、この構図が今やほぼ完全になくなった感がある。

一つには、私学の学費値下げ競争が拡大したこと。
私が受験生の頃は、唯一、慶応だけが破格に安くて、東大理3受験者の併願はほぼ慶応医だけだった。
それでも学費だけで約2000万円であるが、奨学金で月16万借りられるなら、6年で1152万円。
あと1000万円弱なら、私学の理工系とあまりかわらない費用である。
そこに慈恵医大が参入した。国立との併願ができるようにしてかつ二校目の2000万円台に。
そこから、順天堂大、昭和大……とつぎからつぎへと値下げ合戦の様相となった。
結果的に、そのような大学は、それまで受験さえしなかった国立オンリーの上位層が
受験者として乗っかり、軒並み偏差値をあげたのである。
次の表は、2013年頃であるが「学費の安い順が偏差値の高い順」という
きわめて分かりやすいデータの一部である。

学費と偏差値.tiff学費と偏差値.tiff学費と偏差値.tiff学費と偏差値.tiff学費と偏差値.jpg←クリックして拡大

右欄は、駿台の偏差値である。
慶応・慈恵・順天・日医等が66-70なのは昔からあまりかわらないし、
国立医学部もそれをくだらないのも不動の事実である。
しかし、学費とほぼ逆連動して偏差値が高くなり、
その中に、昭和とか、東京医科とかが入ってきているがわかるだろう。
首都圏であること+学費の値下げ効果であるが、私と同世代には、
違和感(隔世感?)があるにちがいない。
「そんな、私学だからといって。上から目線の発言じゃないのか」
などと思う人もいるかもしれない。
しかし、これは主観や感情の問題ではなく、客観的事実なのである。
では、証拠に次の表をみてみよう。これは河合塾の偏差値である。

偏差値推移.jpg

たとえば、左端1975年頃には52.5という平凡な偏差値であった昭和大は、
右端2015年には70に迫る勢いで上昇カーブを描いてきた。
杏林や帝京などは50を切る偏差値で入れた時代、(もちろん学費は半端ない)それも今は昔。
すべての私学医学部が偏差値65の時代に突入したといえる。
「今ならオレは医者にはなれないかな・・・」という親の世代の嘆息は、切実である。
たとえ子どものためにいくら学費を蓄えていようとも、偏差値50ちょっとで入れる医学部は
もはや日本中探しても0となったのだから。

もう一つの要因は、最近とくに目立ってきた「センター試験利用」の受験枠である。
これなら、センター試験を受験して、とくあえず願書をだすだけでよく、
とりたてて私学の過去問を研究するといような「対策」はいらない。
最初から国立医学部向けに勉強していればいいのだから。
 実際に、センター試験利用で、順天堂大にすすんだ2人のGHS卒生がいる。
昨年、今年と卒業年を迎えた。2人とも国立医学部志望であり、
センター入試で入った者達である。
もちろん?稼業は医師ではなく、親戚から資金援助をうけたり、
奨学金でまかなったりすれば、無事に卒業できることを示している。
この二つの要因がなければ、二人が私医大のイスを占めることはなかったのは確かだ。

この傾向に一層拍車がかかってきたのが現今の私立医学部入試である。
「ついに、2000万を切る1850万の私医大が登場!!」
今年はじめての募集を行う国際医療福祉大学である。
フタをあけてみれば、予想を超えた激戦となったもようである。
学費ランキング.jpg










2017年の学費ランキング
もはや「医者の子弟→私立医学部へ」「サラリーマンの子弟→国立医学部へ」という構図は
完全に過去のものとなった。後者が私立医学部を受験するのに抵抗や障壁がなくなってきた。
そのため前者は、割を食って、行き場所が狭くなり、多浪化がさらに加速している。
2浪、3浪……でGHSの門を叩く生徒も珍しくなくなった。

「親が医者だから医学部」という動機自体は、親の姿をみて育つという意味では正しいが、
もはや、医学部受験のモチベーションとしては頼りない感じさえする。
その前にまずは優秀でなきゃならない。それはまあ、当たり前といえばそうだが。

今年の事例
あるGHS生からの中間報告。
英語182,数学191,化学92,生物91 556/600 得点率92.7%
国立医学部志望ではなく、私立医学部コースである。
この生徒は2浪目に東海方面からわざわざ上京してGHSにきた。
英語はできる方だが、理系はだめ・・・という‘“GHSへの適性”としては抜群で、
相性よく、この一年で理科も数学もずいぶん伸びてここまできた。
国語や社会がないという違いがあるものの、この得点率は、
東大理3の受験者平均じゃないかと思うほど優秀な成績だ。

私医大のみでも、センター試験は受けるほうが、受験機会が増える。
今や、センター試験は私学をとりこみ、医学部受験のキーワードになりつつある。

1月後半から、杏林や国際医療福祉大学をまずは受験した。
結果、後者には一次合格したが、杏林一次は「補欠の●十番」ときた。
「おいおい、こんな優秀な人間が、あのキョーリンの補欠かよ,WHY!!!!!!」
「いったいどれくらいデキる学生が受験しているんだ?????」
……例によって我々世代のDr.たちは一層深いため息をつくにちがいない。


これほどに医学部志望が加熱したのは、先の要因の背景にある、
社会の先行き不安・安定志向であるだろう。
一昔前の安定志向は、公務員か、大企業かであった。
これには少子化の影響もあるだろう。子どもが少ないと、一人当たりの教育費は上がる。
それは、夙に指摘されていることだから、ここで深堀りする必要もなかろう。

ゆえに、これから医師になりたい、と希望する受験生には、いっておきたい。
「淡い夢」ならやめておきなさい。成績優秀でないと入れない。
すこしでも甘さがあればムリ。
抜け道も安易な道も、裏道もまぐれも何もないのだから、「偏差値65なんてムリだ」
と思ったら、早目に別の道を探しなさい、と。
受験生自身も親も、過去のモノサシを切り換えて、改めて「医学部受験」を考えることが必要だ。

このような私医大の難化の加速は妥当なのかという疑問はあるにはあるが、
しかし、難化すればするほど、まともな方法論・上達論が必須になってくる、
その点では、時代に左右されない教育メソッドを探求しつづけたGHSにとっては幸いなり、
慌てもせず受け止め、今まで通りを貫く所存である。
posted by Koujin Amano at 15:43| 入試制度

2017年01月18日

[99] 難化上等

2017年 あけましておめでとう。
年末年始まであわただしく過ごしたので、やや遅れて休暇をとり、
家族で沖縄に行き、ヌクヌクとすごし鋭気を養って来た。
なにせ、0℃〜5℃の信州から+20℃の沖縄に飛べば、血管は一気に開き、
神経は緊張を解かれ、代謝がアップして心身の疲れが自然に取れていくのがわかる。

我が家は、すっかり沖縄びいきになってしまったようで、
下の娘は「琉球大」志望を宣言するに至った。……近所にやはりオキナワ好きで
農学部にすすんだお兄さんがいることもあるが…それにまだ小2だし……。

ということで、私の本年の始動は1/10からであったため、あっというまにセンター試験を迎えた。
フタをあけてみると、昨年からの「化学の難化」は引き継がれたようである。
「化学基礎」という科目をつくり文系と棲み分けたことで、文系に配慮することなく、
発展的な内容をもあつかう「化学」が理系のための試験として相応しい姿となっている。

といっても・・・・思い起こせば、私が文系受験生として受けた共通一次試験には、
文系も理系も区別なく、「化学」を受けた。逆に理系も社会科目に逃げ場がなかったが。
だから、文系ながらも、基礎公式1〜8すべてを含む化学計算の対策をするのが当たり前だった。
そのハードルからすれば、昨年、今年の「難化」などまだ手ぬるい感はあるものの、
「ゆとり」の時代の、文系も含めて平均点を確保するためのスカスカのセンター試験からすると、
ずいぶんマシになってきたといえる。
「化学」は科学であり、学問なんだから、易しくあっていいわけがない。難しいからこそ、
メソッドを確立し、実力を磨いたものが勝ち抜いて行ける。それでこそ「勉強」の名にふさわしい。
易しい問題を出していては、やり方云々を探求する必死さは生まれてこない。

早速、高校二年生にむけて、「一年後の君の為に」と銘打って、今年のセンター試験「化学」の
計算問題だけを編集したテストをつくってやらせてみた。
今年の化学の計算問題は、全部で11問。有機化学は3問あり、高校二年には無理なので、
これを除いた8問のチャレンジとした。

結論はいつも同じ。
『体系化学』にしたがえは、すべて同じように一本の式で、同じ思考法で立式できるのだ、
ということを確認したにすぎないが、これから高校三年生となる身にとっては、
これらを快刀乱麻のごとく、すべて「瞬殺」で解いてしまう
自分の一年後の姿に希望をいだいたことであろう。

入試センターが公表するデータでは、たいしてできない生徒もまざっていて差が薄められているが、
私の生徒が通う、県内ではトップクラスの進学校では、センター試験の理科の平均点は、
生物80点を筆頭に,物理、化学の順に10点ずつ下がっている。難化対策必須の科目だ。
化学は共通選択だから科目間差があってもまあいいだろう。「難化」の中身はといえば、
「化学は難しくて解けないというほどではないが、量が多くて解ききれない」
と言う声がほとんどらしい。要するに問題の難易というより、判断力・処理能力の問題だ。

でも、結論は同じ。
問題ごとに計算のやり方を考えているから時間がかかるにすぎない。体系化学的にズバッと斬り払えばよい。
「化学の解き方は一つ」という体系化学のテーゼがこれからさらに輝きを増す予感。
GHSと私にとっては、そんな希望の見える年明けとなった。
posted by Koujin Amano at 16:16| 体系化学

2016年12月30日

[98] 化学のカリキュラム 2016回顧

高校の授業って・・・
センター試験や私立医学部入試の足音を聞くと、
授業の方は店じまいの時期。
個別的にはフォローするが、授業としては年内に終わることが常なる目標である。
だから、3月から早めに始めたとしても、12月までのわずか10ヶ月で
高校三年間の化学の再履修と受験レベルへのアップという「難題」に挑まねばならない。

そうなってしまうのはGHSの門を叩く浪人生のほとんどが、
高校化学をまともに履修できていないからに他ならない。
今年は、高校2,3年生の個別的な指導をする機会があり、
実際の高校の授業の中身を知ることができているのだが、
「せめてこれくらいはできないと高校卒業できないよ」という
基本のしっかりした指導を受けていない。雑多な知識を詰め込んで、
泡沫と化すのみ、何か幹で何が枝葉かも分からぬまま。
それは指導者のアタマの中がそうだから仕方ないことではあるが。
輪をかけて、そういう教師がすがりつく教材会社も今は昔のレベルだからである。

「授業の進度」という形式上のアリバイ要件はみたして卒業させられてはいるが、
中身のない質の伴わない化学教育が化学難民浪人生を量産している。今も昔も。

まあだから、上を目指すほどに浪人するしかないのであるが、GHSでは「急がば回れ」で、
いかに効率的に再履修するか、というカリキュラムの創造に取り組んできたのである。

定性化学テキスト 完成!!
以前から取り組んできたことではあるが、定量化学を主軸とする『体系化学』に対して、
定性化学の部分を補完する「定性化学」のテキストがようやくにして、最終点に到達した。
『体系化学』と前後して、当初は1990年から15年分のセンター試験の全過去問を、
定性化学の体系にしたがって、余すところ無く配列するという、手間のかかる作業であった。
当初は切り貼りでやっていたのを、徐々にデータ化していき、昨年の無機化学篇たるpart4、
本年はpart5にあたる有機化学篇をデータ化して、一応の完成を見たのである。

この間に歳月を重ねたこともあり、過去問は10年分近くたまってしまったが、
データ化してあるので、配列変更や割り込みは自由にできる形になっている。
必要に応じてテキストに取り込み、あるいは、確認テスト用に振り分けたりする。

主眼としたのは「すべてを学び尽くす」ということである。化学の内容自体は、
たかだかこれくらいの年月で変るものではなく、指導要領による出し入れ程度しかない。
まだ易化していなかった1990年代の問題を取り込むことによって、どのような幅にも
対応できる形がとれている。高々センター試験の範囲では、作れる問題は限られているのだから、
こうやって各分野を系統的に、易から難へとやり尽くしていけば、すべてが類題になるわけである。

GHSの化学の授業は、大きくは三本立てで、『体系化学』による定量化学と、定性化学、
それにアドバンス化学をくわえて(有機化学は別にある)10ヶ月で終了する。

「来年は、アトバンス化学の後半のデータ化を更にすすめたい」と思いつつ,新年を迎えることになる。
posted by Koujin Amano at 15:15| カリキュラム

2016年11月30日

[97] 体系化学アドバンス・ハンパねーぞ

二学期の ‘アドバンス’
 前々回お知らせしたように、『医大受験』連載分の体系化学アドバンスは一冊にまとまり、
4年に渡った連載を一望することができるようになった。
GHS生全員には配布済みで、先に進みたいものは独習できるようになった。
何かが終わるということは、何かが始まるということ。
その胎動が二学期に次々と現実化した。

つまり、アドバンス(1)には収録されなかった、つまり『医大受験』では連載されなかったテーマでの設定とともに、執筆と問題収集と編集がすすんだということである。

今回は、そのなかでも出色の一つだけ取り上げることにしよう。
そのテーマは「無規定量分析」である。
誤植ではない。よくある「無機定性」ではなく、「無機定量」という設定である。
無機定性分析といえば、20数種類の金属イオンを系統的に分離する方法を主とするが、
多くの入試問題を分析すると、それでは、アドバンスレベルの演習には耐えないことがわかった。
定性はもちろんのこと、それを含む「無機定量」という視点での問題分析が必要なのである。

この作業は,ここ数年の入試問題を「無機定量分析」の視点から、
体系化学p.270に掲載の「塩の沈殿傾向」の表にそって,
150余の入試問題を系統的に配列する仮定で浮かび上がってきたものである。
すなわち、無機定性分析は、定量的扱いと切り離せないものであり、
溶解度、各種反応、および溶解度積と一体化しての出題となり、
いきおい総合力が試される問題が目白押しである。
その意味で、二学期後半から取り組むに相応しいテーマである。

この分析と編集には時間がかかったが、見事に150問余が
「塩の溶解傾向」を縦糸に、体系化学計算を横糸にして、系統的に配列された。
・・・もっとも、これに体系化学的解答をつけるのは、授業での地道な積み重ねが必要なので、
複数年かけてやることになるだろうが、他のどのテーマよりも出題バリエーションが豊富であり、
かつ対策がしにくいという点では、このテーマ設定はきわめて有効である、と思っている。

いずれ遠くない将来、公開することになるだろうが、
これだけでアドバンス(1)のボリュームに匹敵する展開となるであろう。                                                     《続》



posted by Koujin Amano at 08:29| 体系化学