2016年05月31日

[91] 体系化学・二題 つづき

前回のつづき・二冊目
『化学の新体系』(啓林館・谷川芳雄)は
元灘中学校・高等学校教諭による,灘中高での化学の指導を再現した1冊
とのことである。
実は、本書は、出版前からあるルートから情報は入手していたが、
出てみれば「新体系」とは中々チャレンジングな書名である。
啓林館の教科書編集に長年かかわってきた著者の灘高退職記念出版ともいえよう。
優秀な灘高生は教科書ではきっと飽き足らないから、かれらを退屈させずに、
授業を成り立たせるためには、そこから知識の枝を伸ばしてやらねばならぬ、
そういう内容に満ちている。
ただ、読めるようにはなっていない。教師向けではある。

★ 授業の展開がイメージできる,板書例を中心にした紙面構成

とあるように、板書したうえで何事かを語らねばならないが、
それは語られていない。むしろそれを元にど何を語るかのDVDがほしいところ。
だから、授業用ノートをベースにした退職記念本といったのだが
そこはおなじく高校の化学教師である『化学の新研究』の著者とはちがう点である。
まあ、厚さがちがうから仕方ないが、参考書としてつかうには、
使う側の力量が必要である、ということは両書とも共通である。

では肝心の「体系」はどうなのか?「原理」が掲げられているのか?
といえば、あるにはある
  化学結合に基づいて物質を完全に理解できるように,
  粒子運動のエネルギーに基づいて物質の化学反応の考え方を理解できるように

というコンセプトでの図式が与えられている。その何かはあるようだ。……が、
それが全体にどう一貫しているかについては解説がないし、
今のところ私には読み取れない。これは、授業を聞くしかないのかな……と。

以上、二冊の「体系化学」について所感を述べてきたが、まあ、とにかく、
昔も今も、参考書や問題集から体系的な何かを期待して、受験生読者が
そこから体系的な何かを読み取らなければならないというのは、
止めにしていいのではないか、そう思った次第である。  《この項・了》
posted by Koujin Amano at 18:19| 体系化学