2017年02月01日

[100] 難化,妥当?

センター試験から私立医学部入試へと日程は進み、
私立医学部入試の結果報告が届くようになった。
生徒達は明暗・悲喜こもごもの日々。

難化の連鎖要因
私立医学部の難化をうけて、GHSが2008年に私立医学部専門コースを立ち上げて、
10年ちかく……。当時、中堅私立医学部が早稲田理工より偏差値が上になった!!!!
との記事が「日経メディカル」をにぎわした。
現役ドクターや医学部の関係者がざわついたものである。
「今だったら、オレ、医者になっていないかな・・・」と。
実は、この間にまた難化は加速し、あらたな質的変化がみられたように思う。

かつては、学費の圧倒的な差があり、国立医学部と私立医学部との間には、
主に経済的問題で、受験生の明瞭な棲み分けがあった。
ところが、主に二つの要因により、この構図が今やほぼ完全になくなった感がある。

一つには、私学の学費値下げ競争が拡大したこと。
私が受験生の頃は、唯一、慶応だけが破格に安くて、東大理3受験者の併願はほぼ慶応医だけだった。
それでも学費だけで約2000万円であるが、奨学金で月16万借りられるなら、6年で1152万円。
あと1000万円弱なら、私学の理工系とあまりかわらない費用である。
そこに慈恵医大が参入した。国立との併願ができるようにしてかつ二校目の2000万円台に。
そこから、順天堂大、昭和大……とつぎからつぎへと値下げ合戦の様相となった。
結果的に、そのような大学は、それまで受験さえしなかった国立オンリーの上位層が
受験者として乗っかり、軒並み偏差値をあげたのである。
次の表は、2013年頃であるが「学費の安い順が偏差値の高い順」という
きわめて分かりやすいデータの一部である。

学費と偏差値.tiff学費と偏差値.tiff学費と偏差値.tiff学費と偏差値.tiff学費と偏差値.jpg←クリックして拡大

右欄は、駿台の偏差値である。
慶応・慈恵・順天・日医等が66-70なのは昔からあまりかわらないし、
国立医学部もそれをくだらないのも不動の事実である。
しかし、学費とほぼ逆連動して偏差値が高くなり、
その中に、昭和とか、東京医科とかが入ってきているがわかるだろう。
首都圏であること+学費の値下げ効果であるが、私と同世代には、
違和感(隔世感?)があるにちがいない。
「そんな、私学だからといって。上から目線の発言じゃないのか」
などと思う人もいるかもしれない。
しかし、これは主観や感情の問題ではなく、客観的事実なのである。
では、証拠に次の表をみてみよう。これは河合塾の偏差値である。

偏差値推移.jpg

たとえば、左端1975年頃には52.5という平凡な偏差値であった昭和大は、
右端2015年には70に迫る勢いで上昇カーブを描いてきた。
杏林や帝京などは50を切る偏差値で入れた時代、(もちろん学費は半端ない)それも今は昔。
すべての私学医学部が偏差値65の時代に突入したといえる。
「今ならオレは医者にはなれないかな・・・」という親の世代の嘆息は、切実である。
たとえ子どものためにいくら学費を蓄えていようとも、偏差値50ちょっとで入れる医学部は
もはや日本中探しても0となったのだから。

もう一つの要因は、最近とくに目立ってきた「センター試験利用」の受験枠である。
これなら、センター試験を受験して、とくあえず願書をだすだけでよく、
とりたてて私学の過去問を研究するといような「対策」はいらない。
最初から国立医学部向けに勉強していればいいのだから。
 実際に、センター試験利用で、順天堂大にすすんだ2人のGHS卒生がいる。
昨年、今年と卒業年を迎えた。2人とも国立医学部志望であり、
センター入試で入った者達である。
もちろん?稼業は医師ではなく、親戚から資金援助をうけたり、
奨学金でまかなったりすれば、無事に卒業できることを示している。
この二つの要因がなければ、二人が私医大のイスを占めることはなかったのは確かだ。

この傾向に一層拍車がかかってきたのが現今の私立医学部入試である。
「ついに、2000万を切る1850万の私医大が登場!!」
今年はじめての募集を行う国際医療福祉大学である。
フタをあけてみれば、予想を超えた激戦となったもようである。
学費ランキング.jpg










2017年の学費ランキング
もはや「医者の子弟→私立医学部へ」「サラリーマンの子弟→国立医学部へ」という構図は
完全に過去のものとなった。後者が私立医学部を受験するのに抵抗や障壁がなくなってきた。
そのため前者は、割を食って、行き場所が狭くなり、多浪化がさらに加速している。
2浪、3浪……でGHSの門を叩く生徒も珍しくなくなった。

「親が医者だから医学部」という動機自体は、親の姿をみて育つという意味では正しいが、
もはや、医学部受験のモチベーションとしては頼りない感じさえする。
その前にまずは優秀でなきゃならない。それはまあ、当たり前といえばそうだが。

今年の事例
あるGHS生からの中間報告。
英語182,数学191,化学92,生物91 556/600 得点率92.7%
国立医学部志望ではなく、私立医学部コースである。
この生徒は2浪目に東海方面からわざわざ上京してGHSにきた。
英語はできる方だが、理系はだめ・・・という‘“GHSへの適性”としては抜群で、
相性よく、この一年で理科も数学もずいぶん伸びてここまできた。
国語や社会がないという違いがあるものの、この得点率は、
東大理3の受験者平均じゃないかと思うほど優秀な成績だ。

私医大のみでも、センター試験は受けるほうが、受験機会が増える。
今や、センター試験は私学をとりこみ、医学部受験のキーワードになりつつある。

1月後半から、杏林や国際医療福祉大学をまずは受験した。
結果、後者には一次合格したが、杏林一次は「補欠の●十番」ときた。
「おいおい、こんな優秀な人間が、あのキョーリンの補欠かよ,WHY!!!!!!」
「いったいどれくらいデキる学生が受験しているんだ?????」
……例によって我々世代のDr.たちは一層深いため息をつくにちがいない。


これほどに医学部志望が加熱したのは、先の要因の背景にある、
社会の先行き不安・安定志向であるだろう。
一昔前の安定志向は、公務員か、大企業かであった。
これには少子化の影響もあるだろう。子どもが少ないと、一人当たりの教育費は上がる。
それは、夙に指摘されていることだから、ここで深堀りする必要もなかろう。

ゆえに、これから医師になりたい、と希望する受験生には、いっておきたい。
「淡い夢」ならやめておきなさい。成績優秀でないと入れない。
すこしでも甘さがあればムリ。
抜け道も安易な道も、裏道もまぐれも何もないのだから、「偏差値65なんてムリだ」
と思ったら、早目に別の道を探しなさい、と。
受験生自身も親も、過去のモノサシを切り換えて、改めて「医学部受験」を考えることが必要だ。

このような私医大の難化の加速は妥当なのかという疑問はあるにはあるが、
しかし、難化すればするほど、まともな方法論・上達論が必須になってくる、
その点では、時代に左右されない教育メソッドを探求しつづけたGHSにとっては幸いなり、
慌てもせず受け止め、今まで通りを貫く所存である。
posted by Koujin Amano at 15:43| 入試制度