2017年05月29日

[104] 勝つための・体系化学3  ー「水蒸気」は「単振動」ー

体系化学アドバンスの消息
  前回のつづき、「体系化学3」の話である。
体系化学3の授業は4月この方、数回行ったが、
GHSでもこれまであまり十分触れていないエリアに侵入している。
というのも、そこまで説かなくても生徒たちが合格していったということなのだが、
「大は小を兼ねる」ような授業をやる・・・・つまり、体系化学テキストを学び切り、
私がやりたいことをやりたいようにやっても応じてくれる生徒が存在するのは
著者として実に幸せなことである。私をさらに楽しませてくれる。

以下はかつて『医大受験』創刊号で書いておいた
「体系化学アドバンス」の連載予定リストである。

第1講 化学反応公式❻の陥穽と完成
第2講 世に言う「二段階中和」という嘘実
第3講 「チオ硫酸ナトリウムとヨウ素の反応」という‘遠回り’の効用
第4講 混合物とその平均   ー「平均分子量」は役に立つか?ー
第5講 結晶格子の色々様々
第6講 基礎公式と化学法則の修練
第7講 油脂計算を極めるフォーマット
第8講 1st Stageの最終獲物(ゲーム)  ー「蒸気」と何か, 蒸気圧の法則性ー
第9講 熱化学の一歩先   ー3番目の‘基準’とイオンの捉え方ー
第10講 高分子の世界に届く  ー 大きなnとの付き合い方ー

網掛けしていないところが未公開テーマである。
もちろん、予定とは「予定」なのであり、最初こそ順調に書いていたが、
第5講の「結晶格子」のスタンダードレベルをもう一つの私立医学部向け連載で説いたこともあって
第9講を先に書いたところまではよかったが、GHSでの授業の進展や諸々の事情で、
そこから先、予定リストにはなかった「電池の歴史」の連載に移行した。

“ボルタが遺してくれたもの”と題して、現在、教科書では
「欠陥電池の発明者」かのような不当な扱いをされ、
「電流を人類に開放した大恩人」としてのレスペクトが皆無であることへの義憤と、
ダニエルから電池の話がはじまるという教科書執筆者の見識の低さへの慨嘆と、
さらには、身近であるという理由だけで「電池」が『化学基礎』の教科書で扱われ、
高校生の化学学習に混乱をもたらす弊害への憂慮とにより、
テーマをこちらにふったという経緯がある。

なんとなれば、「電池」というのは身近でありながら、
それは化学技術の集大成であり、高度なデバイスであるのだから、
それを化学入門レベルの高校生が理解することは至難なのである。
化学反応も複雑であり、とうてい「化学基礎」の範囲とはいえない。
これは、高校化学を一通り学んだあとに、その集大成の技術の一例として学ぶべきであり、
それは「コロイド」と同様だと思っている。
……その論証としての電池の歴史の展開に、4号分、一年間のページを費やしてしまった。
それほどに、「電池」は、アドバンスレベルの内容だからだ。

そして、そうこうするうちに『医大受験」自体が終刊を迎えることとなり、
それでは!! ということで、まったくふれていない有機化学について、
連載を二回したところで終了となった次第である。
その後に残った未公開テーマのうち、大物中の大物が
  第8講 1st Stageの最終獲物ゲーム   「蒸気」と何か, 蒸気圧の法則性
である。
水蒸気ないし蒸気の問題は、昔々から「難問」のエリアにありつづけているが、
水蒸気の扱いについて、系統的にかつ明確に説いたものは管見では未だ無い。

「水蒸気」は「単振動」だ!?
 近年、いわゆる「入試問題正解」という書物から、
「入試問題データベース」へのシフトがすすんでいる。
毎年出される「入試問題正解」は、ページ数や解答掲載のハードルがあるためだろう、
毎年の入試問題を網羅できていない。主要大学プラスαには編者のセレクトがかかっている。
これに対して入試データベースには、その制限が無い。しかも、数年にわたって
テーマやキーワードで入試問題を収集することが可能である。
「入試問題正解」では、索引等で該当ページを調べ、コピーないしスキャンしOCRでテキスト化し、
さらに、文字化け等の修正をして形を整える・・・という手間が必要だった。
だから、5題も処理したら手一杯だったものだ。

このハードルが大きくクリアーされた入試データベースを用いて、
ここ8年分のほぼすべての入試問題から、「水蒸気」や「蒸気圧」に検索をかけた。
積年の(強いて言えば、私が受験生の時からの積年である)課題であった、
「蒸気」に関する考えうるかぎりの入試問題をあつめるということが実現した。
その数はおよそ200問超。GW前後の余暇は、そのタイトル付けと分類とに費やされた。
なかなか、有意義な連休の使い道であることか!!!

  その結果は以下である。

 体系化学アドバンス(2)
   第︎●●講 水蒸気と蒸気のトリセツ
       Part 1.蒸気とは何か
§1-@ 状態図と三重点 水
§1-A 状態図と三重点 二酸化炭素
§2-@ 蒸気圧曲線 水
§2-A 蒸気圧曲線 水以外
§2-B 蒸気圧曲線   水と●●との蒸気圧比較
§3     水銀柱と蒸気圧
Part 2.蒸気圧についての法則と応用
§4-@ 蒸気圧降下 ラウールの法則
§4-A 蒸気圧降下 分留 ー水蒸気は味方さー
§5     水蒸気蒸留
Part 3.水蒸気はジャマ者さ?!
§6     気体と水蒸気の混合物
§7     固体と水蒸気
§8     水上置換と水蒸気
§9     燃焼反応と水蒸気
§10   ヘンリーの法則と水蒸気圧

如何であろうか。一覧してお分かりと思うが、有機化学をも含んで、
化学すべての分野にまたがる巨大な問題群を形成する。
言い方を変えれば、「蒸気の問題」をすべてやれば全分野でハイレベルの学習ができる、
ということである。それは、物理でいえば「単振動」のようなものである。

単振動は物理のあらゆる分野で(原子物理でさえも)姿を見るものである。
したがって、アドバンスレベルとして単振動にフォーカスして全分野を学習するという学び方は、
ずっと以前から「単振動スペシャル」と題してGHS体系物理で演習してきたものである。

 化学でそれに匹敵するのは「水蒸気・蒸気・蒸気圧」である。
でもまあ、『医大受験』に連載しなくてよかったかな・・・。
少なくとも4年くらいかかりそうなテーマである。
   
授業では、それを体系化学的に説き、かつ解き直し、解答を確定するという
探究的な取り組みが必要である。授業はゼミのような討論の場となる。
こちらが提示した項目について、GHS生たちが腕を振るって解答を書いてきてくれる。
実にありがたい。『体系化学』もその蓄積で形となったんだった。
私一人で歩こうとしたら、とうていやり遂げられないだろう。今年もよい生徒に恵まれた。
もっともっと、楽しませてもらいたいものだ。
posted by Koujin Amano at 09:53| 体系化学