2017年11月29日

[108] ' 高分子系統樹 'ということ

センター試験、異変!?
 12月が迫り、二学期丸々使った有機高分子の講義が修了を
迎えようとしている。油脂、炭水化物、蛋白質、ゴム、
そして人工的高分子へと各項目に十分なる時間をかけて進んできた。
GHS生たちも、急ぎ足ではない高分子の授業をはじめて体験したことだろう。

昨年から特に注力しているのが、「人工的高分子」である。
ご存知のように、センター試験化学もまた難化がはじまっている。
有機化学に絞っていうと、人工的高分子の出し方がハンパない !!
ナイロン66とかPETとかの定番ではもう済まされない。
ビニル系、とくにアクリル酸系のメタクリル酸、アクリル酸メチル、
アクリロニトリル、そしてアクリル酸メチルとパッと見が同じの、
酢酸ビニル等々・・・・・・が、選択肢に堂々と登場する。

もちろん、難化上等!!、「高分子の世界に届く」授業を展開してきた
GHS生にとっては、他に差をつける好機でしかない!!

有機高分子系統樹
 有機高分子の項は、どの教科書も、どの参考書も、
たくさんの高分子が列挙され、フルカラーで用途が示されている。
で・・・それはどう学べばよいのか?という問題には答えていない。
つまり、高分子はいっぱいありすぎて、頭の中で収拾がつかないものである。

体系化学アドバンス(1) (ないし『医大受験』誌)で説いた、
「電池の歴史・系統樹」を参照していただくと話はさらに早いが、
このような人工物の技術の歴史には、時系列の系統樹的把握が有効である。

というのも、電池も人工的高分子も、人間が作りあげてきたものだからであり、
一つの発明・技術が登場すると、次にはその欠点を克服したり、
その長所を拡張した発明・技術が登場し、その連鎖が歴史をつくる。
もっとも、現実の歴史には、偶然と紆余曲折がつきものだから、
それを論理的歴史として捉え返す必要があるが、そのフイルターを通せば、
高分子の歴史もまた、電池の歴史と同様に、ストーリー性が見出せるものである。

この際、留意すべきは、「機能分類をしないこと」である。
人工的高分子というものは人間が意図した通りの機能になるとは限らない。
シルクを目指してストッキングになったナイロン然り。
また、人間社会の変化によって用途が規定される。
映画のフィルムやセル画ベースが、デジタル化によりピンポン玉や小銃火薬へと
用途が限定され住み場所をみつけたニトロセルロースのように、である。

したがって、「このポリマーは、︎■,︎■,︎■,・・・等々の用途に使われる」のような
列挙的説明は、受験生にとって迷惑千万、有害無益である。
教育メソッドとして必要な視点は「歴史的・構造的分類」であると思う。

まずは自然的有機高分子から人類が何を学んだか?」から始まり、
そこから高分子化に至る構造を抽出することになる。
その高分子化構造体を既存の有機反応をふまえてmodifyし、
次から次へと新たな高分子を生み出していく歴史が続く。

その中でも、系統的把握がもっとも有効なのが、天然ゴムから学んだ、
ビニル・ファミリーである。
とはいえ、注意すべきは、名称は必ずしも系統的ではないことである。
各々の開発者が気の向くままに命名するものだから系統性は隠れてしまいがちだ。

だが、生物の系統樹にくらべれば扱いやすい。
そこには人間の意図はないから、生物系統樹の枝葉はどこまでも分岐していくもの。
そして生物学的にはどの枝も研究者にとっては「等価」のようである。
アメンボだって、オケラだってみんなみんな生きているんだ、研究対象なんだ!!…と。
しかし、高分子系統樹には人間の意図が絡む
アドバンス化学で公開している「電池の歴史」と同様に、
前者の欠点を克服する意図をもって次の世代へと進む。
その流れをみればよい。

高分子の学びは、羅列でも横並びでもなく、系統的に!!
次年度用に製作する有機化学テキストver.5では
その部分を追加掲載することになる予定である。
posted by Koujin Amano at 17:33| カリキュラム